現在の厳しい経済環境において、売上を増加させることは非常に困難な状況で、コストを削減しようと考えたとき、打開策として挙げられるのが人件費削減ではないでしょうか。 しかし、闇雲に人件費の削減を行っても、社員のモチベーションを下げるたけで十分な 成果は得られず、会社自体の体力も消耗してしまいます。人件費削減には、経営者が明確 なビジョンを示し、冷静な判断かつ誠意ある対応で取り組まなければなりません。 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、これまでにかけてきたコストの見直しを迫られ、人件費の削減に取り組まれた企業も多かったのではないでしょうか。 そこで今回は人件費削減を失敗しないために気を付けたいポイントをご紹介します。
人件費とは
人件費とは、会社が従業員に対して使用する費用のことです。給与や賞与(ボーナス)の他にも、社会保険料や退職金、福利厚生費なども人件費に含まれます。

人件費の内訳
給与手当
従業員に支払う給与と各種手当を指します。基本給のほか、残業代や休日手当、家族手当などの各種手当金、業績によって支払われるボーナス、通勤手当や社宅費用といった現物給付がこちらに含まれます。パート・アルバイトの社員に支払う給与は「雑給」として処理されるケースもありますが、基本的にはこちらの給与手当に含まれます。
福利厚生費、法定福利費
福利厚生費とは、福利厚生を目的として企業が支払う費用全般を指す言葉です。従業員の慰安を目的としたサークル活動や社員旅行にかかる費用、結婚・出産祝い金や慶弔金といった冠婚葬祭費用、社宅費用なども福利厚生費となります。その中でも、法律に基づき企業が負担することが義務付けられている費用のことを法定福利費といいます。健康保険、厚生年金保険、介護保険等の社会保険費用、労災保険や雇用保険などの労働保険費用の一部または全部を会社が負担して支払います。
旅費交通費 通勤のための定期代や出張にかかる旅費、移動のための交通費、出張手当などが含まれます。
出張手当は「出張日当」とも呼ばれ、出張先での食事代の補助などに支払われます。
採用教育費
従業員の採用のための費用や、業務に必要な知識・技術習得のためにかかる費用のことです。具体的には、従業員募集の求人広告費、新規従業員に対しての外部講師による講習を行なった際の会場費、講師への報酬などが挙げられます。
削減のメリット・目的
①他のコストも削減できる
社員が減ればそれに伴う他のコストも下がるので、経費削減には直接的な効果があります。
社員が減ると、以下のような経費を減らすことにつながります。
・教育費用(研修、資格取得支援など)
・日用品費
・水道光熱費
・事務所賃料(オフィス縮小が可能なら)
・交通費支給分
・ボーナス・有給分の給料
②他の目的に費用を充てられる
人件費を削減して資金に余裕ができれば、その資金を他の事業や投資に回すことができます。過重労働気味だった従業員の負担を減らし、生産性を向上させることが可能になれば、労働環境も良くなるはずです。

③銀行からの評価が上がる
人件費削減により決算書内の経費を抑えることができれば、数字上では企業利益を黒字にすることが可能でしょう。
銀行からの企業への評価は、利益が上がっているかどうかで決まります。決算書が黒字になれば、結果的に銀行から好意的な評価を得られ、融資などを受けやすくなる可能性があります。
ただ、決算内容の問題や資金繰りが解決したところで、根本的な問題解決にはならないので注意が必要です。
④株価も上がる
人件費削減によってコスト削減が図られ、業務効率が上がれば、投資家からは好意的に受けとめられるようになります。つまり、投資家から株式を購入されやすくなるので、必然的に株価も上がります。

こんな人件費削減はNG!
人件費削減による経営改善は一時的なものに過ぎません。会社の経営状況が悪化していた「根本的な原因」を改善しないことにはまた経営状況は悪化し、株価は落ちます。それを踏まえた上でやってはいけない人件費削減を紹介します。
・安易なリストラや給料カットのみ行う
リストラや給料カットのような安易な人件費削減のみを行なうことは、避けるべきです。なぜなら、従業員のモチベーションが下がって業務効率が落ちたり、結果的に離職率アップにつながるからです。対応する従業員がいなければ顧客の見逃しや機会損失を招いてしまい、かえって利益が下がることも考えられます。
・人手不足を招く
人件費削減(給与やボーナスカット)をされた社員としては、給料の良い会社を探すのが自然なので、良いところが見つかれば必然的に会社を辞めていきます。さらに、人手不足になれば、一人当たりの仕事量が増えるので、耐えかねた社員も辞めていくという悪循環が起こります。人件費削減はあくまで慎重に。

・会社の評判を下げる
人件費削減(給与やボーナスカット、リストラなど)のような悪いニュースは、必ずといって良いほど外部に漏れるので会社の評判を落とすことになります。「社員を大切に扱わない会社」として会社の評判が悪くなると取引先との関係にも影響しますし、新しい社員を採用する際も苦労することになるでしょう。
まとめ
目先の苦境を逃れるために安易に給与やボーナスをカットしたり、人員を削減すると悪循環を生んでしまう恐れがあります。人件費削減の本来の目的は「社員の数や給料を減らす」のではなく「利益をあげて人件費率を下げること」です。人件費の削減を検討しはじめた場合は、まずは無理なくできる範囲から行うことがおすすめします。
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