少子高齢化によって、医療や介護の需要が高まる一方で働き手は減り、病院経営は現在とても厳しい状況に置かれています。そしてそんな状況に追い打ちをかけるかのように新型コロナウィルスが日本中に蔓延しました。このようななかで病院経営においてもコスト削減の必要性は高まっています。しかし気をつけなくてはならないのは、病院がコストをカットすれば、医療の質も下がってしまうかもしれないということです。では病院がコスト削減を実現するにはどのような方法があるのでしょうか。今回は病院経営におけるコスト削減のポイント、取り組みなどについてご紹介します。

1、病院におけるコスト

病院の種類によって差はありますが、病院のコスト(=医業費用。本業である医療サービスの提供に発生する費用)の内訳は、一般的に給与費=50%、材料費=25%、委託費=8.4%、設備関係費(減価償却費や保守料)=9.3%、経費=4.4%です。医業費用が100億円であれば、そのうち給与費が50億円、材料費が25億円ということであり、病院は「労働力に対する依存度が高い」産業、つまり労働集約型産業といえます。

2、コスト削減の方法

病院のコストについてもう少し詳しく見ていきましょう。

①給与費                                      

給与費とはいわゆる人件費のことです。人件費は労働集約型産業において最も重要な資源「人」に関するコストです。人件費の見直しと聞くと、人員整理やボーナスカットを想定する方も多いのではないでしょうか。これらの策は病院の現場から反発を招くので安易に削減すべきものではありません。
そこで取り組むべきなのが、「固定費の削減」です。固定費の削減は人員整理だけでなく、非正規雇用を増やすことでも可能です。必要に応じてアルバイトを増やしたり、シフトを変動させたりすることで固定費を減らし変動費の割合を増やせば、売上が減少したときの赤字幅も減らすことができます。

②医療材料費
医療材料費とは、診療に使う消耗品や備品のことです。材料費はコスト削減が難しいと思われがちですが、過剰在庫や使用期限切れの医薬品の廃棄損などの面で、多くの病院で改善の余地があります。方法は大きく分けて2つあります。1つ目は、仕入れ単価の適正化です。市場の適正価格を確認した上で、院内の総発注数をまとめ卸業者と価格交渉を行うと、原価を下げることができます。仕入先が別れていないか、調達時期が分散していないかを改めて確認し、統一できるところは統一しましょう。
2つ目は、備品のムダを減らすことです。ムダな在庫や在庫管理の手間を減らすことで、労働時間の削減にもなり、医療材料費と給与費の削減効果が出ます。

③委託費
病院が一部の業務を外注する費用が委託費です。病院における委託費には、給食委託費やリネン委託費などがあります。委託費削減のポイントは、まず委託する業務内容をできる限り具体化し、本当に必要な項目を明確にすることです。また、市場調査として、他病院での価格を調査して最適な価格を導き出したり、それをもとに価格交渉することなども有効です。

④設備関係費
設備関係費には、医療機器の保守管理にかかる費用の他に、清掃費や警備費などがあります。保守管理料に関しては、安易にフルメンテナンス契約を締結するのではなく、万一のリスク対応として、発生したときに損害保険でカバーする方法があります。これによって保守管理料を数%軽減できる場合があります。清掃費や警備費は、範囲や面積、あるいは頻度によって変動します。現在行っている清掃や警備が適切かどうか確認し直し、範囲や面積の縮小、回数を減らすなどすれば費用削減につながります。

⑤その他経費
ここには水道光熱費や事務に使う消耗品費、交通費などが含まれます。このなかでも比較的容易に取り組みやすいのが照明器具をLEDに替えることです。病院内では非常に多くの照明器具が必要なので、蛍光灯1本にかかる電気代がそこまで高くないとしても、合計すればかなりの費用になってしまうはずです。また、蛍光灯の寿命は13,000時間で、LEDの寿命は約40,000時間と約3倍の差があり、交換時にかかる作業経費も約3分の1に抑えられます。

3、コスト削減のポイント

医療の専門家である医師や医療従事者にとっては医療の質が何より重要なので、医療の質に関わる医薬品や医療機器に関するコスト削減を図るのは簡単ではありません。
また、病院は、医師・看護師・医療専門職と医療事務からなる縦割り組織であるため、院全体でコスト削減に取り組むには、組織横断的に目的を理解し、意識を共有することが大事です。
コスト削減といえばどちらかといえば良くないイメージを持たれがちですが、医薬品や医療機器のコストの見直しやスタッフの効率的な配置をすることで経費削減への意識が変わります。

まとめ

病院は一般の企業とは異なり、「人の命」に直接関わる産業です。そのことから、病院におけるコスト削減は非常に難しいものだと言えます。しかし、いくら人の生死に関わる病院といえども利益を揚げていかなければ経営は立ち行かなくなります。病院にも他の企業同様に、コストを削減できて医療の質にも直結しない部分もたくさんあるはずです。病院のような大規模な組織では、職員一人一人がコスト削減や省エネの意識を持って日々の仕事に取り組んでいくことが重要です。

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