2020年から約2年間、新型コロナウィルスの蔓延によって、日本の多くの産業が非常に厳しい状況に直面してきました。その中でも観光に関係する企業、とりわけ「宿泊業」においては国内外の観光客が減少し、大きなダメージを受けてきました。今もなお、休館・閉館を迫られたり、人員の削減を余儀なくされるなど厳しい決断を求められている企業も少なくないのではないでしょうか。24時間営業しているホテルや旅館では、他の業種よりも水道光熱費などのコストが高い傾向があります。より利益を高めていくためには、隠れた「ムリ・ムダ・ムラ」を見つけて無くしていかなければなりません。今回は、宿泊業におけるコストの中身、コスト削減のポイントなどについてご紹介していきます。

1、宿泊業におけるコスト

ホテルや旅館を営業するにあたってどのようなコストがかかるのでしょうか。一般財団法人日本旅館協会が2020年に発表した「令和元年度版 営業状況等統計調査」によれば、原価を除く経費のうち最も割合が高いのは「人件費」で、ホテルでは37.9%、旅館では34.0%となっています。続いて、水道光熱費などからなる「業務費」では、ホテルが15.0%、旅館が16.2%になってます。そのあとは、リース料などの「管理費」、広告宣伝費などの「営業費」、そして「減価償却費」「支払利息」と続きます。宿泊業は、労働力に対する依存度が高い「労働集約型産業」であるため、ある程度の人件費が掛かることは避けられません。コストの見直しを図るのであれば、次いで経費としての割合が大きい水道光熱費を中心とした業務費から削減に取り掛かるのがいいでしょう。

2、コスト削減の方法

宿泊業は、民宿や民泊などの10室以下の小規模な宿泊施設と10室以上の大規模な宿泊施設の二つに分けることができます。そこでここからは、小規模施設と大規模施設それぞれに必要なコストとその削減方法について見ていきたいと思います。

〈小規模施設のコストの種類〉

  • 人件費
  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 消耗品費
  • 広告宣伝費

人件費や家賃といった固定費は、たとえお客さんが1人も宿泊しなかったとしても発生するコストです。そのため、赤字経営を防ぐには「固定費」を中心としたコスト削減を目指すことが重要です。

【小規模施設の固定費の削減方法】

①水道光熱費
水道代とガス代に比べて電気代は比較的簡単にコスト削減ができます。以前は基本料金と従量料金が電気代として請求されるのが一般的でしたが、現在では基本料金はなく、使った分の従量料金のみを電気代とする新電力会社も増えてきました。また従量料金の単価も定額の会社と契約すれば使用量に合わせて電気代の計算も容易になり、また電気を使うほどお得になることもあるので、契約先を選ぶときの参考にしてください。

②自動化                                    小規模な施設だからといって何でも人の手で行おうとすると、その分人件費がかかってしまいます。たとえばチェックアウト時の会計は精算機を使って無人で行うなど、自動化を上手に取り入れることで人件費は削減できます。ただし、やりすぎると小さい旅館や民宿ならではの温かみがなくなってしまうので、そのあたりのバランスを考えることが大事です。

③家賃                                     これから施設のレンタルもしくは購入を検討している場合、家賃を払い続ける方法と安い建物を買ってリフォームする方法と、どちらが費用を抑えられるか計算してみましょう。場合によっては購入+リフォームのほうが安く済むこともあるので、必ずしもレンタルにこだわる必要はありません。


〈大規模施設のコストの種類〉

  • 人件費
  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 消耗品費
  • 広告宣伝費
  • リース代

大型ホテルの場合は施設の規模が大きいため、古い建物を購入、リフォームするより借りる場合がほとんどです。

ここでは、小規模ホテルにはない「リース代」について説明します。小規模な宿泊施設なら、たとえばコピー機などが必要でも小型のものを購入すれば十分です。しかし、規模が大きくなると大型のコピー機が必要になり、購入すると高額になるのでリース契約を結ぶ場合が多いでしょう。

【大規模施設の固定費の削減方法】 

①水道光熱費                                                 小規模ホテルと同じように、大型ホテルにおいても新電力会社を選択するとコスト削減につながる場合があります。特に大型ホテルでは電気を多く使うため、新電力会社に切り替えるだけで、従来の大手電力会社よりも大幅にコスト削減できる可能性があります。

②人件費                                                   こちらも小規模ホテルと同様に、できるところは自動化すると人件費の削減につながります。また、スタッフの給料を下げたり、人員を削減するのではなく、業務を効率化したうえで初めから雇う人数を少なくしておくと、スタッフの満足度が高くなり離職率低下にも影響します。さらに求人にかかる費用の削減にもつながります。

③リース代                                                  時にはリースよりもレンタルで済ませたほうがコスト削減につながる場合もあるので検討してみてください。家具や備品に関しては、小規模ホテルと違い必要数が多いため、リースではなく中古品あるいは最近増えている格安の家具店で購入するとコスト削減につながるケースもあります。

3、コスト削減の注意点

ここまでコスト削減できる項目とそれに対する削減方法を説明してみましたが、これらに取り組む前に注意しなければいけない点が一つあります。それは、「顧客満足度」です。                              コスト削減によって自社が築いてきたブランドイメージや信頼を損なってしまわないか、利用してくれたお客さんをがっかりさせないか?をまず第一に考える必要があります。失ってしまったものを取り戻すためにまた費用や時間をかけるということになってしまっては本末転倒です。目先の利益ばかりでなく、そのコスト削減がこの先どこでどう影響をもたらすのかまで考えて取り組んでいきましょう。

まとめ

宿泊業において、コスト削減は避けて通れないといっても過言ではないでしょう。サービスの質とコスト削減の両方を実現するのは簡単なことではありません。コスト削減の対象となる要素は、至る所に存在しているはずです。まずは一歩を踏み出して地道に取り組んでいくことが重要です。

弊社では、業務効率化・コスト削減を目指すお客様のサポートを行っております。ご興味のある方はぜひお気軽にご相談ください。