小売店はあらゆるビジネスの中でも、利益率が圧倒的に低く、儲かりにくい業態です。
スーパーマーケットやコンビニ、ドラッグストア、百貨店を含めて利益率が1~2%なのは普通です。たとえ大手であっても利益率がほぼ0%になるのは普通であり、少し売上が悪ければ簡単に赤字になります。
小売業では、店舗数の増加やネット販売の台頭・少子高齢化、そして追い打ちをかけるように新型コロナウイルスが蔓延し、さまざまな問題を要因としてコスト削減の必要性が叫ばれています。
激しい競争を強いられる小売業界を生き残っていくためにはどのような方法でコストを削減したら良いのでしょうか。
そこで今回は「小売業」におけるコスト削減についてご紹介していきたいと思います。

1、小売業の現状とコスト削減の必要性

現在、日本国内における小売業は、苦境に立たされていると言っても過言ではないでしょう。
少子高齢化に伴い消費が低迷していくのに対して、店舗数の増加や異業種の参入、ネット販売の台頭などによって競争はさらに激しさを増しています。
デフレによって客単価が落ち込み、新しい店や安売り店などに消費者が流れることが常態化し、既存店では思い切った改革や大規模な改装などをしない限り、業績が前年割れしてしまうということが当たり前のように起こっています。
また、2020年から発生している新型コロナウイルスの感染拡大もコスト削減の必要性が高まる要因のひとつになっています。
小売店はこのような状況下を生き抜いていく必要があり、そのためには「コスト削減」を積極的に行わなければいけません。

2、小売業におけるコスト

小売業におけるコストの一例を紹介します。

地代家賃                                     固定費の代表的な例です。物件を借りてお店や事務所を運営するためには毎月大家さんに家賃を支払う必要があります。少しでも家賃が安い物件に移転すれば削減することができますが、安すぎる物件は立地が悪かったり、狭かったりするものです。移転費用もかかるので、削減するのはなかなか難しいというのが現実です。

租税公課(固定資産税)                                 自分の土地に建物を建てて、そこで店舗や事務所を運営すれば、家賃は必要ありませんが固定資産税がかかります。他にも自動車税や不動産取得税、消費税なども租税公課に含まれます。租税公課もなかなか削減するのが難しい経費ですが、不要な土地や自動車を所有している場合は手放してしまえば削減することができます。

減価償却費                                                     資産に計上した固定資産のことです。建物や設備、機械やコンピュータ、厨房、自動車などがこれにあたります。無駄な設備投資はしない、安いものを選ぶ(たとえば社有車を普通車ではなく軽自動車にする)ことで削減が可能です。

売上原価                                                      売上を上げるために直接的に必要となる費用です。材料代や仕入れ費用などがこれにあたります。経費の中でもかなり大きな部分を占めます。材料や仕入れの原価を抑えることで利益を上げることができますが、あまりにもコストダウンしすぎて商品やサービスのクオリティが下がってしまえば客離れが起きて売上が下がり、結果として利益も少なくなってしまう事態にもなりかねません。

水道光熱費                                                     水道代や電気代、ガス代などのライフラインがこれにあたります。特に飲食店の場合はこの水道光熱費が大きな出費となります。こまめに電気を消す、水道を流しっぱなしにしないといった日頃の心がけで削減することができます。

人件費                                                       従業員に支払うお給料や賞与などです。社員を雇って店舗や事務所を運営している場合はこの給料賃金も大きな経費となります。 たとえば、簡単な業務や繁忙期に一時的に人手が必要な場合はアルバイトやパート、あるいは外注に置き換えることで、給料賃金を削減することが可能です。

3、コスト削減の失敗例

コスト削減は、ただやればいいというものではありません。きちんとした計画に基づいて取り組まなければ、以下で挙げるような失敗につながってしまうことがあります。

安易な発注                                                 考えなしに安易な発注を繰り返していると非効率な状態を生み出してしまい、コスト削減への障害となります。具体的には、特売時に前回と同じ発注をかける、多めの発注をかける、全国の店舗で同数・同一の色、サイズの発注をすることなどが挙げられます。このような発注をすると、商品が売れ残ってしまうことがあります。「安く仕入れているから定番商品として売ればいい」と考えて売ろうとしても、特売で売れ残るものがいつも売れるとは限らず、特定の商品の在庫が増えることで品揃えが悪くなったり、食品の場合は鮮度が悪くなったりといったことも起こり得ます。全国で一律の発注をかけた場合も同じことが起こり、廃棄リスク・返金コストが増えてしまうでしょう。売れない商品がたくさん残ってしまう、このようなケースを「不良在庫」と言います。不良在庫には売れない理由が存在し、ときには他の商品にも悪影響を与えることもあります。コスト削減のためには安易で根拠のない発注をやめて、不良在庫が発生しないように工夫することが必要です。

目先の売上を重視してしまう                                         目先の売上を求めるあまり、それを基準に施策を決めてしまうということもコスト削減にはつきものです。例えば月の売上目標が3,000万円、日割り予算100万円の小売店があると仮定します。30日で終わる月の25日の時点で2,300万円しか売上を出せていないとき、売上の不足分200万円を残り5日に割り振るとなると、日割りの予算が140万円となってしまいます。このとき、普段の方法では無理があるからという理由で、全品10%オフなどの割引を残り5日行うブースター施策を実施したとします。しかし、こうしたアプローチでは短期的な目標は達成できたとしても、トータルで見ると粗利が大きく落ちてしまうことにもなりかねません。売上目標をショートすることになったとしても商品を安売りしない方針で、無理な値引きを行わないことが粗利の確保につながります。

ムリな人件費削減                                              企業によっては人件費削減につき、通常10人で回していた業務を半数以下の人員でまかなうといったケースもあるようです。このような無理なコスト削減を行うと、従業員一人ひとりの負担が増加するだけでなく、管理職の人員までが本来する必要のない業務をしなければならず、売上が減少するリスクがあります。ひどい場合は業務全体が滞ってしまい、人件費の削減はできても利益が減ってしまうこともあります。人件費を削減するときは人員を減らさずそのままの状態を維持して、一人ひとりのルーチンワークとなっている作業効率を上げるようにして、集客を増やすなどの時間に割り当てられるようにしましょう。たとえ人件費が据え置きとなってしまっても、工夫をすれば売上アップは見込めます。

まとめ

ビジネスで利益を出すためには、売上の拡大だけでなくコスト削減も非常に重要です。経費削減では業務改善が必要になることはあるものの、特に努力なしにコストカットできる項目も存在します。しかしコストカットによってサービスの質を落としてはいけないということも大切なポイントです。目標と戦略を明確にし、じっくりと計画を立てて問題点を洗い出した上で取り組んでいきましょう。

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